相談室へようこそ!〜MSWの徒然なる日記〜

医療の世界に魅せられたMSWが日々のことを綴ります。

蝋梅と社会福祉実習

1月に初詣に行きました。

同じ職場の事務の先輩と後輩ちゃんを巻き込んで市内の縁結び神社を複数まわりました。

ある神社のお庭に蝋梅が咲いており、わたしは社会福祉実習を思い出さずにはいられませんでした。

社会福祉士取得にあたって、「23日間以上、かつ180時間以上(当時)」の実習を行うことが必要とされています。

わたしは「社会福祉協議会」、通称「社協」で実習を行いました。

当時から医療機関での実習は希望していたのですが、人気ゆえ実習先探しが難航すること、自宅から遠い実習先になる可能性が高いと先輩から教えられていたため早々に諦めて「自動車・原付通勤可」「自宅から10分以内」の地元の社協に行くことにしました。(実習へのモチベーション低い…)

社協」とは地域福祉の推進を図ることを目的とした民間団体であり、いろいろな事業をやっているので日替わりで多種多様な内容を勉強させていただいてました。

ある日わたしは利用者のお宅訪問をしていました。

利用者のお宅にいく前に生活歴を記した書類を読みます。その中の「在宅酸素」や「障害者手帳○級」、「要介護○」といった言葉にうろたえ、一体どんな人なんだろうと不安になりました。

そして実際に行ったお宅、広い一軒家にぽつんと一人いた鼻から管をつけた女性。その女性は職員の方を見るなり「今ね、折り紙をしてたの」と笑顔になりました。

そして見せられた箱やら小さな鶴やら作品の数々…なんて繊細な作品をつくる人だろう、と想いました。

その女性は突然自宅に押しかけた実習生に嫌な顔せず、いろいろとお話していただき、そして聞かれました。「貴女、誕生日いつ?」

わたしが「○月✕日です」と答えると、その方は「誕生花事典」なるものをパラパラとめくり、「まあ、この花ね」と見せてくれました。それが蝋梅。

はじめて蝋梅を見た私は思いました。「えっ…地味…」

だってあと数日違ったらクリスマスローズとかクレマチスとかですもん。しかし女性は「まあすてき。わたしこの花大好きなの。あなたにぴったりだわ。」

そうかしら、わたしにぴったりかしら。そんな柔和な笑顔で言われたらそんな気がしてきた。なによりその方のお宅にきてから30分たってもまだ緊張していたわたしの心がほぐれていくようでした。

この実習で、わたしが学んだことは蝋梅の美しさ…だけではなく、「要介護度」や「身体障害者障害認定等級」といった尺度からは見えない利用者の姿に目を向けることの大切さです。

この穏やかな出来事によって、わたしは当然の事実をつきつけられ、雷をうたれたようになりました。この興奮を帰りの車内で「どうだったー?」と言った職員の方に伝えました。おそらく纏まりのない言葉だったでしょう。それでも伝えたかった。そしてその方は言いました。「ふーん。」

あら、わたしあまりにも当然のことを言いすぎてしらけさせちゃった。ちょっとショックをうけつつも、次の実習報告のための登校日(社会福祉実習は定期的に報告の義務があるらしく、実習のない土日に登校してました)にゼミの指導教官に伝えました。そしたら教官が「いいじゃない、それ卒論のテーマにしたら?」

実はわたしは卒論のテーマに難渋しており、実習終わったら本腰あげてテーマをいくつか出さないとな…と思っていたのですが、なんと苦しめられていた卒論のテーマもあっさりと解決したのです。

それからは援助を必要とする人を一人の人間として理解する、というライフワークのために死にものぐるいになりながら卒論を書き、はてには研究をつづけるため大学院進学を決めました。もちろん今もこのライフワークを続けている最中です。

「原体験」という言葉があります。人の生き方や考え方に大きな影響を与える幼少期の体験。この出来事は確実にソーシャルワーカーとして「幼少期」だったわたしの思想に影響を与える体験と言えるでしょう。消極的だった実習でお金では買えない「原体験」を得たわたしはたいへん恵まれていました。

その「原体験」を思い出させる「蝋梅」に初詣で再開しました。あの女性はまだ自宅で生活できているだろうか。折り紙の作品は増えているのだろうか。わたしがお宅にお邪魔してから5年以上の月日が経っています。黄色の花を見ながら女性の柔和な笑顔が守られていることを願わずにはいられませんでした。

 

P.S.このエピソードは実習記録にも卒論にも書いてないうえに、友人にも家族にも先生にも伝えてない、いわば「誰も知らない物語」です。(先生には「書類と利用者の姿が異なるから尺度にはあらわれない利用者の姿を理解しないといけないと学んだ」くらいしか伝えてない。こんなくだらないこと…て思われるのがこわかった。)自分すらもあまり理解してなくてこの度文章化してみて改めて「ほぉ…」と思いました。誰にも伝えてない物語をあなたと共有できてよかったです。
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はじめに。

こんにちは。文系大学院を卒業して某リハビリ病院でMSWこと医療ソーシャルワーカーをやっております、ラピスと申します。

ずっと書こう書こうと思って書けずにいたブログをとある平日の公休に立ち上げました。

その理由は、わたしは文系大学院に進学し、卒業後新卒で医療ソーシャルワーカーとなったのですが、「文系大学院」への進学も「医療ソーシャルワーカー」の就職も世の中のいわゆる「王道ルート」とは外れており、情報収集に四苦八苦した思い出があるからです。私のような道を歩もうとしている方のどうか一つの道標となればと思い、立ち上げました。

また、わたしには一つの夢があります。それは「医療ソーシャルワーカー」という仕事の知名度をあげることです。

野望としては、看護師さんくらい、みなさんが知ってる職業になればと思っております。

わたしのブログが医療ソーシャルワーカーという仕事を知るきっかけとなれば幸いです。

そんな大きな野望を掲げたブログですが、ゆるゆるっとつづけていければなと思っています。

新米ソーシャルワーカーゆえ、仕事帰りの平日はくたくたで何も考えたくない、ひどいときはテレビなどの刺激も受け付けない、という日々ですし、アラサー女子なので人生の進め方にも悩んでいます。どこまで書けるかなと不安でもありますが書きたいことも書くべきこともあるのでゆるやかに進められたらと思います。

またソーシャルワーカーである前にわたしも一人の人間。好きなものもたくさんあるのでそちらも書けたらと思っています。

ざっと挙げると、「嵐」(人生で大切なことは嵐が教えてくれた)をはじめとするジャニーズの応援、「ミュージカル鑑賞」(世の中で一番憧れる女性は花總まりさん)、「旅行」、「星空に関する勉強」、「読書」(最近はエッセイが好きです)、「ファッション」、、、あああまだまだある気がする!ちなみに名前のラピスは「ラピスラズリ」からとりました。小学生のときから「鉱石採集」も好きですね。

こんな感じで一人のソーシャルワーカーとして、一人の大学院卒業生として、一人のアラサー女子として日々の思いをつれづれなるままに書けたらと思います。